ラハフ・シャニ ミュンヘンフィル来日公演

 ラハフ・シャニ指揮によるミュンヘンフィルハーモニーの来日公演を聴きに行ってきた。サントリーホール。なんと空席がかなり目立つ入りとなった。曲は、ベートーヴェンのエグモント序曲、プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番(チョ・ソンジン)、ブラームスの交響曲第4番。アンコールは、チョ・ソンジンとなんとシャニの連弾でラヴェルのマ・メール・ロワ(一部)と、チョ・ソンジン単独でショパンの子犬のワルツ。最後のアンコールにハンガリー舞曲第5番。

 日本のオーケストラの技術は世界レベルだといつも感じている。その割に海外の来日公演よりもかなり格安(とはいってもお財布的にはちょっと苦しいが)なので、最近はわざわざ海外のオケを聴かなくてもと思い始めていた。

 遠い昔、父親とコリン・デイヴィス率いるバイエルン放送交響楽団で、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」、シューベルトの交響曲第9番(8番)「ザ・グレート」を聴いたが、その時に、イタリアの最初のピチカートの和音に何とも言えぬ感動を覚えた記憶がいまでもあるのだが、その後日本のオーケストラでも感動的な演奏を数々聴いてきた結果、高いチケットを買うよりも、もっと多く聴こうという想いもあった。

 そして、久しぶりに世界一流と呼べるオケを昨年久しぶりに聴いてみた。ネルソンズ指揮によるライプツィヒ・ゲヴァントハウスのスコットランドたが、弦の響きに歴史を感じ、日本のオーケストラとは全然違うという印象を新たにしたが、今回はミュンヘンフィルはどうかと。

 まずエグモント。これは自分でも演奏したことがある思い入れのある曲である(ブラームスの交響曲第4番に至っては初めてオーケストラで弾いた曲でさらに思い入れがある)。ラハフ・シャニはCD含めて初めて聞く指揮者だが、客が少ないことが少し気になったのと一気に吹き飛ばしてくれた。最近スマートかつ快速な演奏を聴くことが増えたような気がしてならないが、エグモントはどちらかというとじっくり鳴らす演奏。それでも風格があるというよりはスマートな印象となる。なかなか良い演奏での幕開けとなった。

 次のプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。私のコレクションにはフレージャーとレイボヴィッツの共演のレコードがあるのみで、ほとんど聴いてこなかった曲。まず、チョ・ソンジンのピアノが凄まじかった。いままで聴いたピアノのソリストの中でもトップクラス。集中力と迫力。そして内面をえぐる様な表現力に圧倒させられた。多少後半エネルギーが心配な感じもしなくもなかったが、最初から最後まで一気に聴きとおせた名演奏であった。アンコールに曲は逆に肩の力が抜けたホッとする演奏になった。何せプロコフィエフにのめり込みすぎて、はい出てこれないのではないかと余計な心配をしてしまったからである・・・・。ちなみにミュンヘンフィルは、ベートーヴェンともブラームスとも違う音色を聴かせてくれてさすがだなあとも。

 そしてメインのブラームスの交響曲第4番。最初の一音(ファーストヴァイオリンはアップから開始)から音の魅力を感じ、伝統を感じさせるもので最後までミュンヘンフィルの音はこうだ、という主張をしっかり聴くことができた。テンポもどちらかというとゆったり。それでも重厚という感じではなく新鮮。フレーズや強弱、バランスなどから、ラハフ・シャニの発想や音楽の方向性がしっかり見えていて、それがオーケストラの隅々まで行き渡っている。伝統的な響きを重んじながら新たな光をこの曲に充てている名演奏となった。音楽監督になることが決まっているわけだが、両者の良好な関係が生み出した結果であろう。そしてミュンヘンフィルの音に、やはり日本のオケには無いものを感じることもできた。どちらが良い悪いではなく、そのオーケストラならではの音が色々あるということだが、ことミュンヘンフィルの音は、ケンペやチェリビダッケなどが守り続けてきた伝統を感じるもので、メンバーは変わっても音のコアの部分はもしかしたら同じ血(血ではなく音だが)が流れているのかもとおもわせるものであった。プログラムに、「柔らかく、決して鋭くなりすぎない音」という共通認識があると、コンサートミストレスの青木さんがコメントしているが、なるほど!と納得させられた。

 アンコールも一気に駆け抜け非常に楽しい一夜となった。もしかして全体を通して歴史的名演に立ち会えたのかなあ、なんて思いここに感想を書いてみることにした次第。音源は当たり前ですが無いです・・・。しかし、客の入りがいまいちだったのは、値段のせいか、曲のせいか。もったいない、こんな演奏会滅多に聴けるものではないのに。